木枯らしが吹く日に(景零)

K学卒業したてぐらいの秋冬の話。


 すっかり風が冷たい季節になってきた。全身に吹きつける木枯らしに体を震わせながら、ぐるぐるに巻いたマフラーに顔を埋める。
 こんなに寒いというのに、隣を歩く幼なじみはまるで平気そうに、むしろ笑みを浮かべながらこちらを見ていた。かわいいけど、何?

「ひげが隠れたら昔に戻ったみたいだな、ヒロ」

 ああなるほど、マフラーで隠れて見えないのか。でもそんな風に言われたら、景光としては何だか複雑だ。

「……ゼロは、ひげが無い方が好き?」

 警察学校を卒業してから整え始めた髭だが、それまでは普通に剃っていたのだ。長年共にいる零からしたら、いや零だからこそ見慣れず、違和感を覚えているのかもしれない。
 兄さんみたいには似合わないかなあ。同期たちは案外いいじゃんと言ってくれたが、他でもない零に否定されたらさびしい。

「そんなことは言ってないだろ? あってもなくても変わらないよ」
「俺が? ゼロが?」

 寒さのせいなのか、つい弱気になってしまっている景光がそう聞き返せば、零はぴたりと足を止めた。え、と驚く間もなくマフラーをずらされて、それから顎に、あたたかな感触。

「どっちも!」

 ヒロはヒロだし、僕はどんなヒロでも大好きだからな!

 そんな言葉ととともに、子どもの頃みたいな無邪気な笑顔を向けられたらもう、お手上げだった。

 零はずるい。急にマフラーがいらなくなるくらいこちらの頬を熱くさせておいて、「そんなに寒いならどこかの店に入るか?」なんて本人はもう平然としている。
 でも思えば昔から、零に手を引かれて日暮れまで一緒に遊んでいたら、景光は冬でもちっとも寒くなかったし、さみしくもなかった。だから、今更なんだろう。

「ゼロ」
「うん?」
「俺だって、ずっと大好きだよ、ゼロのこと」
「……知ってる」

 今更でも伝え合いたいし、変わらないきみもこの想いも大事にしたい。この先に何があったとしても。


「僕もヒロみたいに伸ばそうかな、ひげ」
「エッッ!?」
「……何だよ、ダメなのか」
「いや、ダメなわけはない、けど……ゼロに髭があっても、禿げても太っても、しわくちゃのおじいちゃんになっても、好きだよ? ただ、うまく想像できないだけで……」
「……しわくちゃのお爺さんは、ちょっと先を行きすぎじゃないか?」
「でもゼロはおじいちゃんになってもかっこいいよ。俺、そこは自信ある!」
「何の自信だよ……もう、お爺さんになる前に、ヒロのお兄さんみたいに立派な警察官を目指す方が先だろ?」
「……それもそうだな。頑張ろうね、ゼロ」
「ああ」





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フォロワーの壬生さんのひろれ漫画を元に書いてみました。
かわいいふたりを形にしてくださってありがとうございます……感謝……。


オチの一文で何か切なくなっちゃってそういうのが書きたいとちゃうねん!!!となって会話を付け足すなどした。
ふたりは昔もこれからも変わらず一緒ですが……という強い意思でひろれを書いています、よろしくお願いします(?


あとうちの景光さん、あまりぜろさんのことからかわないな……と思った。
あのムーブ見てるとどちらかというと景光のが降谷さんを翻弄してる感じするのに自分で書くと逆になってしまう……。
なぜならそういう手癖があるから……😌はわわ攻めが好きなばかりに……。

書いても書いてもふたりのこと掴めねえな〜〜だけど書かないことにはよりわからないままなので書いていくしかあるまい……。


てかこれでちょうどひれ小話10こめだ。
目指せ160こ✊